大企業の賃上げ減税とは?

平成30年度税制改正大網の1つに、企業に対する法人税の減税措置があります。この法人税の減税措置が「賃上げ減税」と呼ばれています。

賃上げ減税を簡単に説明すると、大企業の場合、会社で働く従業員の給料を前年比に比べて3%増やすことにより、給与増額分の最大20%を法人税から控除できるようになる仕組みです。これは2019年10月に予定されている消費税10%への増税に備えて消費の冷え込みを抑える目的もあります。

また賃上げをすることにより、従業員の給料が増えモチベーションもあがり、仕事でも良いパフォーマンスを見せる効果が期待できます。会社は賃上げをすることにより税金の控除で減税効果が得られる他に、こうした社員のモチベーションアップから業績のアップも期待できます。

このような効果を期待して税制改正大網では、以下のようなことも規定しています。それは、大企業の中でも給料増額による賃上げや設備の投資に消極的で実施しない企業に対しては、法人税の控除という優遇対象から外され増額になるということです。

これは以前より政府が法人税の引き下げに取り組んできましたが、結果は企業の多くが利益を内部留保金として会社内で取り込み、従業員に還元されなかった背景の対策として規定されました。

大企業の法人税減税の要件は?

では、大企業がこの法人税の減税を受けるために必要な要件を説明します。必要な要件は3つあり、平均給与額の増額、設備投資、教育訓練費の増額があります。

平均給与額の増額とは先ほども説明した通り、大企業の場合会社で働く従業員の給料を前年比に比べ3%増やすことです。設備投資とは新たに国内で、当期の減価償却費90%以上に相当する金額を設備投資することです。

平均給与額の増額と設備投資の2つの要件を満たした場合、前年度から増加分の法人税からおよそ15%を差し引くことができます。

教育訓練費の増額とは、従業員の職務に必要な技術であったり、知識の向上のために必要な教育であったり、訓練、研修や講習などの教育に関する訓練費を増やすことを指します。この訓練費が前期および前々期の平均額より20%以上増加したことを教育訓練費の増額としています。

この教育訓練費の増額が該当した場合、上記平均給与額の増額と設備投資の要件に加え、さらに法人税の控除額が5%上乗せされ、最大で20%まで控除を受けることができます。

実際の法人税減税の効果は?

大企業の法人税減税の要件を全て満たすものとして、今回の減税措置は本当に効果があるのかを検証した結果がありましたのでご紹介します。

今回の試算に使われた企業の資産条件は、税引き前当期純利益が100億円の大企業です。法人税率は29.97%の29億9700万円でした。

従業員の給料を増やすことにより、要件を満たし控除制度をフル活用した結果、法人税は23億9700万円になりました。29.97%あった法人税率が23.976%まで削減された結果です。

29億9700万円だった法人税が23億9700万円になりその差は6億円です。6億円分を税金の控除対象にしようと思うと、給与増額の金額は30億円となります。すなわち、従業員の給料を前年比に比べ30億円増やすことにより、法人税率が最大の20%分減税となる計算です。

悪い賃上げが実施される可能性もある

今回の税制改正の目的は、従業員の給料を増やすことにより消費税10%の増税に備えて消費の落ち込みを抑える目的と、従業員のモチベーションをあげ業績アップにつなげる目的があることを説明しました。

しかし、元々賃上げに消極的だった企業が、増税になることが嫌な理由だけで、賃上げを行った場合、この減税措置が終了した時にその企業が人件費を圧縮してしまうことが考えられます。

政府も今回の税制改正では、企業の内部留保金を従業員に還元する仕組みを打ち出しましたが、その結果減税目的だけで給料を増やした企業が、税制が終了した途端賃金を下げることも考えられるということです。

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