前回「オーナー(同族)経営こそ国際標準!」と説明しましたが、オーナー経営には特有の弱点があると指摘されているので、その弱点を意識したガバナンスが必要です。

【同族経営の3つの弱点】
同族経営では、次の3点が弱点としてあげられます。
オーナー経営者に対する属人的(個人的)な依存度が高い
経営トップの判断のブレや暴走に対する抑止力が特に弱い
同族・家族間の紛争が経営に影響を与えるリスクが高い

<弱点①の対処法>
まず、弱点①に対する対処策は3つあります。
1、経営者が心身ともに健康であること
サラリーマンですら「身体が資本」といわれるのですから、社員やその家族の人生、取引先の経営に大きな影響を持つオーナー経営者の責任は重大です。「釈迦に説法」ですが、経営者は定期的な健康診断や人間ドックを欠かさず、誰よりも健康に気をつける必要があります。心身の健康は、①十分な睡眠(⇔寝不足、夜遊び)、②バランスのとれた食事(⇔暴飲・暴食、偏食)、③歪みの矯正・柔軟体操(→深呼吸や真向法など)、④家族と家庭(⇔夫婦不和、親子げんか)などによって支えられています。
2、組織的運営を行う
属人的な依存度を減らす工夫として、①経営者の思いを込めた経営理念による社員の統合、②補佐陣の育成・登用による経営者自身の負担軽減、③以上の2点を踏まえた組織的な運営が基本となります。
3、最大のリスク要因といえる、事業承継に伴う経営者の交代については事業承継編で触れます。資金面では役員保険等の活用もあります。

<弱点②の対処法>
弱点②に関しては、経営者の倫理観と周りの意見を聞いて熟慮できる自制心が求められます。経営者は、自社の重要な経営問題を相談できる相手がいない中で自社の浮沈を決定する重大な意思決定を迫られる本来「孤独な存在」です。だからこそ、「周りの意見を聞く」ことが大事で、税理士など身近な信頼できる相談相手を持つことが必要です。放漫経営等で倒産した場合は、借入に対する個人保証<注>があると個人破産するケースが多くなります。「いざという時」に会社倒産と個人破産の二重のリスクを負うオーナー経営者は、「自己保身」のためにも健全経営を目指す動機があります。この二重のリスクは、ある意味でビルトインされた(組み込まれた)抑止力ともいえます。

<注>銀行借入に関する代表者の個人保証を是認している訳ではありません。政府も諸外国を調査し個人保証は「先進国の中では日本だけの野蛮な制度」と認めて、「経営者保証に関するガイドライン」を定めて、公的融資機関の日本政策金融公庫を先頭に個人保証のない借入を推進しています。

<弱点③の対処法>
弱点③に関しては、第一に経営者が公私混同や私物化を慎み、他の同族からねたまれず、経営という大変な仕事を担っている事実を彼らに認識してもらうこと、社員からも呆れられない(直接は何も言いませんが)ことが重要です。その上で、第二に、経営に従事する直系以外の同族の持株数を減らすなど、身内の紛争が会社に飛び火しないような独自の工夫が必要です。

経営環境が厳しい現在は、以前と異なり、同族会社といえども、社業に貢献しない無能な後継者、親族を役員に登用して「身内びいき」を行う余裕はありません。実績のある優秀な社員を幹部に登用しなければ、自社の生き残りすら危うい時代です。最終的な決定権はオーナーが握るにしても、日常の事業展開やオペレーションについては、社員の総力が結集できる組織面での手立てや仕組みが必要です。①非同族社員の幹部登用、②成果に応じた賞与配分、③目標管理制度の導入、④経営計画策定への幹部社員参画などが具体的な対応策です。

一方、世界的な大企業では内部昇進した生え抜きの経営陣が集団指導体制をとり、特に上場会社ではガバナンスを図る精緻な仕組みが整備されています。それでも、東芝問題等のように経営者が暴走すると歯止めが効かない場合があるので、暴走する経営者、コンプライアンス(法律・企業倫理の遵守)違反をする経営者を後継者にしないことが最大のガバナンスとなります。

また、コンプライアンス重視、企業不祥事多発の現在においては、組織的には、「不正発生のトライアングル」(動機・プレッシャー、機会、正当化の3要因)を踏まえた不正防止対策を基本にしたいものです。

COMPASSOコンサルティングチーム/多田恵一